IAは最終評価の20%——「試験前に確定できる2割」
IB Chemistryにおいて、IA(Internal Assessment:内部評価)は最終評価の20%を占めます。この20%は、本番の試験結果に左右されず、自分の取り組み次第で事前に積み上げられる得点です。
2024年5月試験のデータでは、Chemistry HLの7取得率は13.8%(受験者18,602名、平均評価4.7)、Chemistry SLは8.6%(17,118名、平均4.2)。HLとSLで5%以上の差があります。この差の一部は、IAへの取り組み方の差でもあると考えられます。
そしてIAで評価が伸び悩む最大の原因は、実験の難しさではありません。評価基準に届きにくいテーマを選んでしまっていることです。
2025年新課程でIAの評価基準が変わった
Chemistry・Biology・Physicsは2025年5月が新課程の初回試験でした。IAについても評価基準が整理され、現在は以下の4つの観点で評価されます(各6点、計24点)。
- Research design(研究デザイン)
- Data analysis(データ分析)
- Conclusion(結論)
- Evaluation(評価)
旧課程と比べて基準の数が絞られ、ConclusionとEvaluationの比重が相対的に高まっています。つまり「実験をやってデータを取った」だけでは半分にしか届かず、そこから何を結論づけ、自分の手法をどう批判的に振り返るかが、評価の後半を決めます。
※ 評価基準の正確な名称・配点は、最新のSubject Guideで必ずご確認ください。
良いテーマの3つの条件
条件1:独立変数が明確で、自分で操作できる
「Aを変えたら、Bが変わるか」を一文で言えるテーマを選ぶことが大切です。独立変数は濃度、温度、pH、時間、触媒の量など、簡単に測定でき、かつ自分でコントロールできる変数にしましょう。逆に、変数が曖昧なテーマを選んでしまうと、Research designの評価が伸びません。
条件2:十分な量とレンジのデータが取れる
Data analysisで評価を得るには、統計分析が可能なデータ数が必要です。目安として、独立変数の幅は5つ以上、各値で3回以上測定できることが挙げられます。独立変数の値が3つしかなければ、傾向を論じることも、誤差を評価することもできません。テーマを決める段階で「何個のデータ点が取れるか」を計算し、最低でも5×3の15個を満たしているか判断しましょう。
条件3:自分の関心と結びついている
探究の動機が自分の興味関心に基づいていることが重要です。「なぜこのテーマを選んだのか」を自分の言葉で説明できないと、考察がどうしても浅くなってしまいます。
テーマの設定理由は、日常生活の疑問でも構いません。部活動、地域の課題、将来の進路につながる興味でも十分です。自分が本当に知りたいと思えるテーマを選びましょう。
よくある失敗パターン
教科書の実験をそのままなぞる
安全ではありますが、独自性がなく、Research designの点数があまり伸びません。既存の実験をベースにするのは構いませんが、必ず自分なりの変数や条件を一段加えましょう。
変数を欲張りすぎる
「濃度と温度の両方を変えたらどうなるか」と考えたくなりますが、変数が増えると何を検証しているのか不明確になり、制御変数の管理も難しくなります。一つの独立変数に絞るのが鉄則です。
Evaluationが「時間が足りませんでした」で終わる
Evaluationは反省文ではなく、方法論の限界を化学的に論じるセクションです。「温度の制御が不十分で、この反応速度の測定に系統誤差が生じた可能性がある」というレベルまで具体化して初めて得点になります。
期限ギリギリで始める
Chemistry IAでは、実験をやり直すことは決して珍しくありません。
一度で成功する前提ではなく、再実験する可能性も考えたスケジュールを組んでおくことが大切です。
テーマを決める前に、評価基準を仮埋めする
僕が特におすすめしているのがこの方法です。
テーマ候補を3つほど挙げ、それぞれについて4つの評価基準を書き出し、「この基準では何を書けそうか」を一行ずつ埋めてみてください。
書けない項目があるテーマは、実験を始めた後もほぼ確実に同じ場所でつまずきます。
30分ほどで終わる作業ですが、数週間分の手戻りを防げることも珍しくありません。
Structure and Reactivityの枠組みを活かす
新課程のChemistryは「Structure(構造)」と「Reactivity(反応性)」という2つの大テーマが配置されています。IAのテーマも、この枠組みのどこに位置づけられるかを意識すると、シラバスとの接続が明確になり、考察に深みが出ます。
テーマ候補の出し方:3つの入り口
「面白いテーマが思いつかない」という相談は非常に多いのですが、多くの場合は考える入り口が1つしかないことが原因です。僕は次の3方向から考えることをおすすめしています。
入り口1:シラバスの単元から逆に探す
反応速度論、化学平衡、酸塩基、酸化還元、熱化学など、まずは学習した単元を一覧にしてみます。そうしたら、「この単元では何を測定できるか」を考えてみましょう。例えば反応速度論なら、濃度や温度、触媒量と反応速度の関係が候補になります。単元から出発するため、考察でも理論と結び付けやすいのが大きなメリットです。
入り口2:身の回りの現象から探す
市販の飲料の酸性度、洗剤の界面活性、金属の腐食速度、食品の抗酸化など、日常には化学の題材が数多くあります。身近なテーマは探究の動機を語りやすく、Conclusionにも説得力が生まれます。ただし、独立変数を1つに絞れる形に落とし込めるかを必ず確認してください。
入り口3:進路と結びつける
医薬系志望なら薬物の安定性、環境系志望なら水質指標といった具合に、志望分野と接続させておくと、後の出願書類や面接でIAの経験をそのまま語れます。EE(Extended Essay)のテーマとの整合も考えておくと、DP2の負荷が下がります。
この3方向で候補を5〜6個出し、そこから前述の「評価基準の仮埋め」で絞り込むのが、効率的な進め方だと僕は考えています。
まとめ
Chemistry IAは、最終評価の20%を占める重要な評価です。そして、その20%は試験前に自分の力で積み上げられる得点でもあります。
そうしたIAの評価の大半はテーマ決定の段階で決まります。独立変数が明確であること。十分なデータを集められること。そして、自分の言葉で探究の動機を語れること。この3つがそろったテーマを選ぶことが何より重要です。
実験を始める前には、評価基準を一度仮埋めしてみてください。少し手間はかかりますが、その30分が数週間のやり直しを防ぎ、最終的な評価にも大きく影響します。
執筆の進め方は理系IAの書き方ガイド、科目全体の対策はIB Chemistry対策ページをご覧ください。