理系IAは「実験レポート」ではない
Physics・Chemistry・BiologyのIA(Internal Assessment)は、最終評価の20%を占めます。この2割は試験当日の出来に左右されず、時間をかけた分だけ積み上がる、極めて価値の高い得点源です。
しかし多くの生徒が、IAを「学校の実験レポートの延長」として捉えています。これが評価が伸びない最大の原因です。IAは評価基準(Criteria)に沿って構成された、一つの独立した探究の記録であり、書き方の作法がまったく異なります。
2025年新課程の4つの評価基準
Biology・Chemistry・Physicsは2025年5月が新課程の初回試験で、IAの評価基準も整理されました。現在は以下の4項目、各6点の計24点満点です。
- Research design(研究デザイン):6点
- Data analysis(データ分析):6点
- Conclusion(結論):6点
- Evaluation(評価):6点
旧課程では5項目でしたが、4項目に集約されました。ここで注目すべきは、ConclusionとEvaluationで合計12点、つまり全体の半分を占めるという点です。
※ 評価基準の正確な名称・配点は、最新のSubject Guideで必ずご確認ください。
この配点構造が意味すること
多くの生徒は、実験の設計とデータ収集に大半の時間を使い、結論と評価は最後に慌てて書きます。しかし配点上は、その最後に書く部分が全体の半分を占めているのです。
逆に言えば、実験そのものが完璧でなくても、そこから何を読み取り、自分の手法をどう批判的に振り返るかを丁寧に書けば、十分に高い評価が得られます。実験がうまくいかなかったIAでも高評価を取れるのは、この構造があるからです。
各基準で何が求められるか
Research design(研究デザイン)
- リサーチクエスチョンが明確で、焦点が絞られているか
- 独立変数・従属変数・統制変数が明示されているか
- 方法論が、そのクエスチョンに答えるうえで妥当か
- 十分な量とレンジのデータが取れる設計になっているか
ここで最も多い失点は、リサーチクエスチョンの曖昧さです。「温度は反応速度に影響するか」ではなく、「〇〇の濃度における△△反応について、温度を20〜60℃の範囲で変化させたとき、反応速度はどう変化するか」というレベルまで具体化する必要があります。
Data analysis(データ分析)
- 生データが適切に記録・提示されているか
- 誤差・不確かさ(uncertainty)が適切に扱われているか
- グラフ・表が正しく作成されているか(軸ラベル、単位、有効数字)
- 統計的な処理が妥当か
有効数字と単位は、知識がなくても機械的に減点される項目です。ここを落とすのは純粋にもったいない失点です。
Conclusion(結論)
- データから導かれる結論が明確に述べられているか
- 科学的な理論・文脈と結びつけて説明されているか
- 既存の文献値や理論値との比較がなされているか
ここが差のつくポイントです。「温度が上がると反応速度が上がった」で終わるのは、単なる結果の記述です。「なぜそうなるのか」を分子運動論や活性化エネルギーの観点から説明し、可能であれば文献値と比較する——ここまで書いて初めて、Conclusionとして評価されます。
Evaluation(評価)
- 方法論の限界が具体的に特定されているか
- その限界が結果にどう影響したかが論じられているか
- 改善案が現実的かつ具体的か
Evaluationは反省文ではありません。「時間が足りなかった」「もっと丁寧にやればよかった」は評価対象になりません。求められているのは、科学的な誤差の分析です。
たとえば「温度計の読み取り誤差が±0.5℃あり、これは測定範囲全体の約2%に相当する。この誤差は特に低温域で相対的に大きく、そこでのデータのばらつきの一因と考えられる」というレベルまで具体化します。そして改善案は「温度センサーを用いた連続記録により、読み取り誤差と時間分解能の両方を改善できる」というように、限界と直接対応させて書きます。
書く順番のコツ:評価基準を先に骨組みにする
実務的におすすめしているのは、実験を始める前に評価基準の4項目を見出しにした空のドキュメントを作り、各項目に「何を書く予定か」を一行ずつ書き込むという方法です。
この段階で書けない項目があれば、その実験計画には穴があります。たとえばEvaluationの欄に何も書けないなら、誤差要因を事前に想定できていないということです。実験を始めてから気づくより、はるかに手戻りが少なくて済みます。
時間配分の目安
IAは締切直前に慌てて仕上げると、必ずConclusionとEvaluationが薄くなります。配点の半分を占める部分が薄いのですから、評価が伸びるはずがありません。
実務的な目安として、以下の配分を推奨します。
- テーマ決定・計画:全体の20%
- 実験・データ収集:30%
- 分析・執筆:50%
多くの生徒は実験に時間をかけすぎ、執筆が20%程度になっています。この配分を逆転させるだけで、評価は明確に変わります。
Paper 1Bとの相乗効果
新課程では、Paper 1Bにデータ分析セクションがあります。ここで問われるのは、グラフの読み取り、不確かさの扱い、傾向の説明——IAで培うスキルとほぼ同じです。
つまりIAに真剣に取り組むことは、20%の内部評価を固めるだけでなく、外部試験の得点にも直結します。IAを「面倒な課題」ではなく「試験対策を兼ねた投資」と捉えると、取り組み方が変わるはずです。
まとめ
理系IAは最終評価の20%を占め、そのうち半分がConclusionとEvaluationです。実験の完成度よりも、データから何を読み取り、自分の手法をどう批判的に振り返るかが評価を決めます。評価基準を先に骨組みにして計画を立て、執筆に全体の半分の時間を確保する——この2点が、IAで高評価を取るための最も実効性のある方法です。
テーマ選びの段階についてはIB Chemistry IAのテーマの決め方もあわせてご覧ください。当塾では、国際バカロレアの理系科目を専門とする家庭教師が、テーマ設定から実験設計・分析・執筆まで一貫して伴走します。