はじめに
EE(Extended Essay)を始める際、多くのIB生が最初につまずくのが「テーマ選び」と「Research Questionの設定」です。「テーマは決まったけれど、Research Questionが広すぎると言われた。」
「先生から『もっと具体的に』と言われたけれど、どう直せばいいのか分からない。」
このような悩みは珍しくありません。
EEではテーマやResearch Questionの質が、その後の実験・分析・考察の質を大きく左右します。 良いResearch Questionを設定できれば、研究の方向性が明確になり、論文全体も書きやすくなります。
この記事では、理系EE(Biology・Chemistry・Physics)に焦点を当て、高評価につながるテーマの選び方とResearch Questionの作り方を解説します。
EEについて知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。
なぜテーマ・Research Questionが重要なのか
EEは、自ら問いを設定し、調査・実験・分析を行い、その問いに答える研究論文です。そのため、Research Questionは論文全体の土台になるのです。
もしResearch Questionが曖昧であれば、「実験方法が決まらない」「何を分析すればよいか分からない」「考察が浅くなる」といった問題が起こります。
反対に、良いResearch Questionが設定できれば、研究の流れが自然と決まり、論文全体にも一貫性が生まれます。
STEP1:研究テーマを決める
Research Questionを考える前に、まずは研究テーマを決める必要があります。理系のEEでは、次のような条件を満たすテーマを選ぶことをおすすめします。
良いテーマの条件
理系EEでは、次のようなテーマを選ぶことをおすすめします。
- 自分が興味を持てるテーマである
- HLで履修している科目から選ぶ
- 将来の進路や興味分野と関連している
- 学校で実験・調査が実施できる
- 十分な文献や先行研究が存在する
- データを収集できる
例えば医学部や生命科学系を志望しているのであれば、BiologyやChemistryのEEを書くことで、自分の興味をより深く探究できます。
また、数か月にわたって取り組む課題だからこそ、「興味がある」という要素は非常に重要です。
避けたいテーマ
一方で、次のようなテーマは避けた方がよいでしょう。
- 範囲が広すぎるテーマ
- 特殊な機器が必要なテーマ
- 倫理・安全上の問題があるテーマ
- 学校では再現できないテーマ
- 文献がほとんど見つからないテーマ
「面白そうだから」という理由だけで決めるのではなく、「最後まで研究できるか」という視点で考えることが大切です。
STEP2:テーマをResearch Questionに落とし込む
テーマは研究する「分野」を表します。一方、Research Questionは、そのテーマの中で「何を明らかにしたいのか」を具体的に示す問いです。
以下にそれぞれの例を示します。

この表からも分かる通り、テーマを決めただけでは研究は始まりません。
「何を」「どのように調べるのか」まで具体的にして初めてResearch Questionになります。
良いResearch Questionの5つの条件
① 何をどのように測定するかが明確である
Research Questionには、測定対象と測定方法が含まれていることが理想です。
例えば、「植物の成長」では曖昧ですが、「7日後の草丈(cm)」や「1分間あたりの酸素発生量(mL)」であれば、具体的に測定できます。
② 独立変数・従属変数が明確である
理系のEEでは、「独立変数(変えるもの)」「従属変数(測定するもの)」を明確に設定する必要があります。
例えば、「pHがカタラーゼ活性に与える影響」であれば、
独立変数:pH
従属変数:カタラーゼ活性
となります。
③ 実現可能である
研究は、学校の設備や期間で実施できる内容でなければなりません。
どれほど面白いテーマでも、実験ができなければEEとして成立しません。
④ 分析・考察できる
EEでは結果を書くこと以上に、「なぜその結果になったのか」を考察することが重要です。
IBで学ぶ内容や、それを少し発展させた知識を根拠として説明できるResearch Questionを設定しましょう。
⑤ 変数の範囲が適切である
独立変数を設定したら、その変数をどの範囲で変化させるかも重要になります。温度を例に出すと、0~100˚Cの間で変化を見ると範囲が広すぎてしまい、意味のあるデータを得にくくなります。そのため、範囲を絞る必要があるのです。
人体由来の酵素を扱うケースを考えると、25〜45℃程度を設定すれば「体温付近で活性が変化すると考えられるため」という理由を説明できます。
範囲の設定理由が明確だと、良い評価につながるでしょう。
Before→Afterで学ぶResearch Questionの改善例
良いResearch Questionは、最初から完璧に作る必要はありません。ここでは、よくある「あと一歩」のResearch Questionを、改善前と改善後で比較します。
① 測定方法を明確にする
Before:光の波長はオオカナダモの光合成にどのような影響を与えるか。
このResearch Questionでは、「光合成」を何によって評価するのかが分かりません。酸素発生量、二酸化炭素吸収量、pH変化など、測定方法を明確にする必要があります。
After:光の波長はオオカナダモの1分間あたりの酸素発生量(mL)にどのような影響を与えるか。
従属変数を具体的な測定値に置き換えることで、実験方法が明確になり、再現性のある研究につながります。
② 変数を明確にする
Before:溶液の条件はマグネシウムとの反応速度にどのような影響を与えるか。
「溶液の条件」という表現では、濃度、温度、pHのどれを変えるのかが分かりません。独立変数は一つに絞る必要があります。
After:塩酸の濃度はマグネシウムとの反応速度にどのような影響を与えるか。
変える要因を「塩酸の濃度」に限定することで、研究の焦点が明確になります。
③ 実現可能性を高める
Before:光の波長はイネの光合成速度にどのような影響を与えるか。
研究の方向性は明確ですが、イネは栽培や試料の準備に時間がかかり、条件をそろえて繰り返し測定することが難しい場合があります。
After:光の波長はオオカナダモの光合成速度にどのような影響を与えるか。
学校で扱いやすい試料に変更することで、限られた期間や設備でも研究を進めやすくなります。
まとめ
良いEEは、良いResearch Questionから始まります。
テーマを決める際は、興味だけでなく、実現可能性や文献の有無も考慮することが重要です。そしてResearch Questionでは、「何を測定するのか」「どの変数を扱うのか」「なぜその範囲なのか」を具体的に設定することで、研究の方向性が明確になります。
最初から完璧なResearch Questionを作る必要はありません。しかし、今回紹介した5つの条件を意識するだけでも、研究の質は大きく向上します。
テーマ選びとResearch Questionの設定に十分な時間をかけることが、高評価につながるEEへの第一歩です。