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IB Physics HL対策完全ガイド|新シラバス(2025年〜)の構成と7を取るための優先順位

Physics HLは理系科目の中で最も7が出やすい——これは事実です

意外に思われるかもしれませんが、IB公式の2024年5月試験統計によると、Physics HLの7取得率は19.6%で、理系科目の中で最も高い数字です。受験者16,470名、平均評価4.9。Chemistry HLが13.8%、Biology HLが7.1%であることと比べると、その差は歴然としています。

「Physicsは難しい」というイメージが強いだけに、この数字は多くの生徒にとって朗報のはずです。ただし裏を返せば、Physics HLを選ぶ生徒は物理を得意とする層に偏っているため、母集団のレベルが高いという事情もあります。それでも、努力が評価に反映されやすい科目であることは確かです。

一方でPhysics SLの7取得率は10.5%と、HLの約半分です。SLはHLに比べて母集団が広く、「理系だから一応取っておく」という層が含まれるためと考えられます。

2025年から新課程:Optionが廃止され2ペーパー構成に

Physicsは2023年から新課程が始まり、2025年5月が初回試験でした。旧課程から変わった主なポイントは次の通りです。

  • 番号付きトピックの羅列から、5つのテーマ(A〜E)による構成に再編
  • Option(選択トピック)が完全に廃止
  • 試験が3ペーパーから2ペーパーに削減(Option用のPaper 3が消滅)

5つのテーマは以下の通りです。

  • Theme A:Space, time and motion(運動学、力、運動量、仕事とエネルギー)
  • Theme B:The particulate nature of matter(熱力学、気体、粒子レベルの物質の振る舞い)
  • Theme C:Wave behaviour(振動、波の性質、重ね合わせ)
  • Theme D:Fields(重力場・電場・磁場、ポテンシャル、場の中の運動)
  • Theme E:Nuclear and quantum physics(原子・核構造、放射能、質量とエネルギー、量子論)

SLとHLは共通のコアを持ち、HLはそこにAHL(Additional Higher Level)の内容——剛体力学、特殊相対性理論、熱力学、電磁誘導、量子物理など——が上乗せされます。

ここで注意:古い過去問の扱い方

新課程になったことで、Option用のPaper 3の過去問は現在の試験形式の練習にはなりません。物理の問題としては良質でも、本番のフォーマットとは異なります。また、先輩から譲り受けたノートや、数年前の対策本を使っている場合、構成が現在と食い違っている可能性があります。

一方で、力学や電磁気の物理そのものが変わったわけではないので、旧課程の過去問もトピック演習としては十分に有用です。「形式の練習は新課程の問題で、内容の演習は旧課程も使う」という切り分けが実用的です。

試験構成とIA

  • Paper 1:多肢選択(1A)+データ分析(1B)の2部構成
  • Paper 2:短答・長文記述
  • IA(Scientific Investigation)20%

IAが20%を占める点は極めて重要です。試験本番の出来に関わらず、事前に確定させられる2割です。ここを固めておくと、試験でのプレッシャーも軽減されます。書き方は理系IAの書き方ガイドで詳しく扱っています。

つまずきやすいテーマと、その理由

指導経験から、生徒が特につまずくポイントを挙げます。

Theme A(力学)

すべての土台です。ここが曖昧なままだと、後のテーマすべてに影響します。特にベクトルの分解と、問題文から状況を図に起こす作業でのミスが多い。図を描かずに式から入る生徒は、ほぼ確実にどこかで失点します。

Theme D(場)

新課程で重力場・電場・磁場がまとめられたことには意味があります。3つの場は数学的構造が似ており、まとめて学ぶと理解が加速します。逆に、個別に暗記しようとすると量に押しつぶされます。「重力場でこう考えたなら、電場では?」と対比しながら学ぶのが正解です。

Theme E(核・量子)

抽象度が高く、直感が効きにくいうえ、カリキュラムの後半に来るため時間切れになりやすい領域です。ここを直前に詰め込む生徒は多いですが、Paper 2の長文記述で概念理解を問われると対応できません。

Paper 1Bのデータ分析:軽視されがちな得点源

Paper 1Bのデータ分析セクションは、知識よりも「グラフを読む・不確かさを扱う・傾向を説明する」といったスキルが問われます。ここはIAで培った実験的な思考がそのまま活きる領域であり、逆にIAを適当に済ませた生徒は、ここでも点を落とします。

有効数字、単位、不確かさ(uncertainty)の扱いは、機械的に減点される項目です。知識がなくても失点する部分なので、演習の初期段階で徹底的に習慣化しておくべきです。

復習の優先順位をデータで決める

すべてのテーマを均等に復習するのは非効率です。優先順位は「配点が大きい × 自分の理解が浅い」の掛け算で決まります。

そのためには、まず自分の失点がどこに集中しているかを知る必要があります。当塾では過去問演習の結果をトピック単位で記録し、失点の分布を可視化したうえで復習計画を組みます。「なんとなく電磁気が苦手」ではなく、「Theme Dの電磁誘導で、記述問題の失点が集中している」というレベルまで分解できると、対策は一気に具体化します。

学年別の進め方の目安

Physicsは範囲が広く、直前期にまとめて対策できる科目ではありません。Grade 11・12を通した配分の目安を示します。

Grade 11の前半:Theme A・Bを「使える」状態にする

この時期に力学と熱力学の基礎を固められるかで、後半の伸びが決まります。定義や公式を覚えるだけでなく、問題文から力の図(free-body diagram)を描き、エネルギーの流れを説明できるところまで持っていってください。この段階での取りこぼしは、Theme Dの重力場や、AHLの剛体力学で必ず表面化します。

Grade 11の後半:IAのテーマを決めて着手する

IAは20%を占めるにもかかわらず、Grade 12になってから慌てて始める生徒が大半です。Grade 11の後半にテーマを決めておくと、装置の不備や測定精度の問題が起きても、やり直す時間が残ります。Physicsは測定の不確かさを正面から扱う科目なので、余裕を持った日程が評価に直結します。

Grade 12の前半:Theme D・EとAHLを詰め、Mockに合わせて仕上げる

抽象度の高い領域が集中する時期です。Mock ExamはPredicted Gradeの主要な判断材料になるため、本番と同じ時間配分・電卓条件で準備してください。

Grade 12の後半:過去問を「形式の練習」として使う

この時期は新しい知識を足すより、失点パターンを潰すほうが得点は動きます。時間切れで手をつけられなかった設問があるなら、それは知識の問題ではなく時間配分の設計の問題です。

まとめ

Physics HLは理系科目の中で最も7が出やすい科目です(2024年5月:19.6%)。新課程では5テーマ構成・2ペーパーとなり、Optionは廃止されました。Theme A(力学)を土台として固め、Theme Dは場の対比で理解し、IAの20%を早期に確定させる。そのうえで失点データに基づいて復習の優先順位を決めることが、7への現実的なルートです。

科目全体の学習設計はIB Physics対策ページにまとめています。

S

この記事を書いた講師

S.M

Math AA HL 7 Physics HL 7 Chemistry SL 7

南洋理工大学(NTU, シンガポール)|指導科目:Math AA・Physics・Chemistry

IB本試験でMath AA HL・Physics HL・Chemistry SLの3科目すべてで最高評価「7」を取得。解いた過去問をトピック単位ですべてデータ管理し、失点の分布から復習の優先順位を決める方法で7に到達しました。同じ手法を、国際バカロレアの理系科目を学ぶ生徒への家庭教師・個別指導にそのまま用いています。

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本記事で引用しているIB公式統計は、International Baccalaureate Organization 発行の Final Statistical Bulletin に基づきます。統計は毎年更新されるため、最新のセッションの数値をあわせてご確認ください。 Grade Boundary の具体的な数値はIBが一般公開しているものではなく、年度・タイムゾーンにより変動します。記載の数値は傾向を示す参考値であり、出願・学習計画のご判断にあたっては学校のIBコーディネーターが持つ公式資料をご確認ください。

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